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水が変わった時|When the Waters Were Changed

『スーフィーの物語』(イドリース・シャー著/美沢真之助訳 平河出版社)より 水が変わった時 >>english   昔々、モーセの師のハディル*が、人間に警告を発した。やがて時がくると、特別に貯蔵さ…

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石の子

潮近い村に、女があった。人並みの器量で肌理良く、気立ても良かったので、嫁にと貰われていくが、歳月経ても子が出来ぬので戻される。そんなことを幾たびか繰り返し、ついに身を隠すようにして集落のはずれに住むようになった。交わって…

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GENGANGER

これは、デーン人の国からやってきた友人が伝えた話である。    ある村はずれに、その辺りの農地一帯を牛耳る富裕な一族の館があった。海に面したその地方では、季節を問わず重い空気が大地を覆い、陽の乏しい冬場などは、…

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街道にて

遥か以前に、私は街道で生まれた。憶えている限り最初に居た場所に耳を澄ますと、靄のように煙った靴音が聞こえる。土砂混じりの貧しい路面を、鈍い音ばかりが行き交っている。解れた緞帳のような記憶を手繰る。あれは物乞いだったのだろ…

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渇いた鴉|The Thirsty Raven

渇いた鴉>>english     首を伸ばしても届かない、無慈悲な水面に苛立ちながら、渇いた鴉は知恵と力を振り絞る。小石をくわえて運んでは、甕の中に落としていく。絶望的な闇から、微かな光…

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綴じられた目| The Eyes Which Were Sewed

綴じられた目>>english     昔或るところに若者が在った。方々で桃を採っては市で売り、ささやかな生活の足しにしていた。或る時、老木に見事な果実を見つけ、いつものようにそれを採ろう…

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病める光

"ここに働かざりし両手あり" 取るに足らない いのちの枝葉(えだは) 花の下 擦れ違う人々の 流れに漂う 紙の二片(ふたひら)   耐え難き星々の輝きよ 責め立てる一つ眼より さらに眩く 冷…