25
Aug 2010
Posted in Blog, Info by arbor inversa at 03:44 am | No Comments »

 

吉祥寺のカフェ&ガレリアPARADAにて、9月11日まで開催中(月曜休)の『PARADA書店』。会期中、菅野まり子のブックアート新作および渡邊ゆりひととのコラボレーションを含む旧作数点を展示販売しております。イベント詳細は、こちらをご覧ください。

 

 

 

大きな絵画に囲まれる展示空間を、限定されたパブリックな場所から、携帯可能で私的なものにできないだろうか・・・。そんな試行錯誤から、”ムートゥス・リベール”のシリーズが始まったのは、2002年、デュッセルドルフ滞在中のことでした。1冊の本のように手の中で、あるいは机上で拡げるインスタレーションとして、賞玩しうる何物かを作れないか・・・

シリーズ名の”mutus liber”は、錬金術の作業工程を絵だけで著した17世紀の本で、邦訳では『沈黙の書』として紹介されています。テキストが無く黙読がなされないため、何とも静かな書物の空間を、旅行くことになります。しかも、絵解きされるべき内容はシロウトでは難解で読解不可能な代物です。(その意味では、馴染みの無い言語で書かれた彩色写本の美麗なページや、よく編集された海外版の画集も同列かもしれません。)ところが、書物という特殊な空間に囲われた図像の力は、時に奇跡的な力を発揮し、読者―読み解こうとする者―の中に潜在する別種の読解力に働きかけます。もしかしたら、イコノグラフィックな絵解きや暗号の解読を企図して書かれたり読まれたりするのではない、著者と読者の共犯関係を無視した別の次元に、イメージが自律呼吸して精気を放っているのかもしれません。

さて、恐れ多くも、その道の名著のタイトルを拝借しておきながら、拙作のブックアート連作は、その途上の発端でいくらか手を付けたに過ぎないというのに、東京に腰を落ち着けて制作を始めるようになってから、徐々にその試みから遠のいてしまいました。今回の出品を好機と、久しぶりに、先の個展『パソスケープ』の世界を、折り本形式の小さな作品に纏めました。

是非、会場まで足をお運びの上、お手にとってご鑑賞ください。

 



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